あすの夢土木

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平成27年8月5日「近代土木遺産巡り現場研修」滋賀

掲載日:2015年8月5日活動報告 , 近代土木遺産巡り現場研修

近代土木遺産巡り現場研修 滋賀県下の土木遺産を見学

建設コンサルタンツ協会(建コン協)近畿支部が8月5日に開催した「近代土木遺産の現場研修 in 滋賀」に、NPO法人あすの夢土木として参加してきました。各種団体が実施する各種PR事業などに関する広報支援事業の一環です。
オランダ人技術者デレーケが指導して堰堤の築造を行ったオランダ堰堤や琵琶湖疎水など見学。参加した建コン協支部会員とその家族60人余が歴史遺産から土木の重要性などを学びながら、夏休みの楽しいひとときを過ごしました。
研修会は、今も現役で人びとの暮らしを支えている土木遺産からその歴史と土木の重要性を学ぶとともに、将来に向けてどのような社会基盤施設を残していくべきかを考える目的で開催しているものです。今回が9回目となり、3年前から支部会員の家族も参加して実施しています。今回は、県下に土木遺産が広く点在する滋賀県内を選択。草津川、瀬田川、琵琶湖に関係する土木遺産および比叡山延暦寺などにも訪れました。

オランダ堰堤を見学

午前9時に大津駅前を出発した一行は、草津川上流に位置するオランダ堰堤を視察しました。
オランダ堰堤は、その一帯の森林が奈良時代から平安時代にかけて、大量の材木が寺院・仏閣の造営に使用するために伐り出されたことからはげ山となり、明治に至るまで大洪水による被害がたびたび起こっていたために建設されたものです。建設には、オランダ人技術者のヨハネス・デレーケが指導、築造から120年以上たった今でもその機能を維持しています。それは、下流側にアーチ構造をもち、堰堤下流面をよろい積みにしていることによるものですが、参加者たちは100年以上たってもその機能を維持している巧みな構造技術に関心を寄せていました。
オランダ堰堤の直下は、バーベキューや水遊びの人気スポットになっており、当日も水遊びをする家族連れでにぎわっていました。

オランダ堰堤

アクア琵琶で洪水体験も

このあと、瀬田川沿いにある水のめぐみ館「アクア琵琶」に訪れました。瀬田の洗堰の横にある国土交通省琵琶湖河川事務所が管理している施設で、琵琶湖の歴史を物語る本物に触れたり、いろいろな模型で確かめたり、ゲーム感覚で楽しく学んだりできる施設です。また、映像も楽しめ、さまざまな楽しい体験を通して、琵琶湖への興味を広げ、理解を深めることができます。
この日は、係員の方の説明を受けたあと、映像で琵琶湖の洪水の歴史を学びました。洪水体験コーナーでは、日本各地や世界でふる雨をはじめ、人工的につくり出された世界最大の雨(1時間600mm)を体験。「すごい」「雨って痛いんだね」というのが子どもたちの率直な感想です。

アクア琵琶で説明を聞く参加者

洪水体験コーナー

桃山様式の建物で昼食を

昼食は1934年に外国人観光客の誘致を目的に県内初の国際観光ホテルとして建築された旧琵琶湖ホテル本館をリニューアルした「びわ湖大津館」に。
旧琵琶湖ホテル時代には、『湖国の迎賓館』として昭和天皇を始め多くの皇族の方々、ヘレン・ケラー、ジョン・ウエイン、川端康成など多分野の著名人を迎え、名実ともに県下唯一の格式を持ったホテルとして営業されていました。
建物の設計は、東京歌舞伎座や明治生命館等を設計したことで有名な岡田建築事務所(岡田信一郎創設)によるもので、桃山様式と呼ばれる特徴的な和風の外観と洋風の内観は、琵琶湖の風景と古都大津の風土に見事に調和したデザインとなっています。
現在、3階建の館内にはレストランやショップの他、貸会議室・貸ホールや市民ギャラリーなどがあり、人々が集い、創造や交流を生み出す場として利用されています。
2000年に大津市指定有形文化財登録、2007年に経済産業省近代産業遺産群認定されました。
参加者は、特徴的な和風の外観と洋風の内観を楽しみながら、おいしいランチで参加者同士の懇親を深めました。

昼食会場

びわ湖大津館前で集合写真

田邉朔郎ゆかりの琵琶湖疎水へ

このあと、今も琵琶湖の水を京都に供給している琵琶湖疎水を見学。大津閘門近辺の様子をうかがいました。
琵琶湖疎水は、第3代京都府知事となった北垣国道が、明治維新による東京遷都のため沈みきった京都に活力を呼び戻すために建設を訴えました。疏水の水力で新しい工場を興し、舟で物資の行き来を盛んにしようというもので、東京の工部大学校を卒業したばかりの田邉朔郎氏を土木技師に採用して、1885(明治18)年に着工しました。
第1トンネルは延長2436mもあり、わが国で初めて竪坑利用による工法を採用し、れんが、材木も直営で生産し、ほとんど人力だけで工事をしたことで知られています。
着工から5年後の1890(明治23)年に完成し、20年後には、更に豊かな水を求めて第2疏水を建設し、同時に水道と市営電車を開業したことで、今日の京都のまちづくりの基礎ができあがりました。

琵琶湖疎水

延暦寺で講話を拝聴

最後の見学地は比叡山・延暦寺。バスでも行くことができますが、坂本駅から延暦寺までケーブルカーで移動し、子どもたちが喜ぶ演出がありました。延長2020mという日本最長のケーブルでもあり、土木技術が十分に発達していなかった当時は、大変な難工事であり、資材運搬には牛車が駆り出されました。この日の気温は午後2時ごろで33℃。延暦寺まで上がると実に28℃であり、少し涼しい気分も味わえました。
延暦寺では、根本中堂で講話も拝聴しました。中でも、1200年間、毎日菜種油を注ぎ続けられている「不滅の法灯」の話が印象に残りました。
毎日油を注ぎ足さなくても数日は燃え続ける薬師如来の宝前を照らす灯火に、油を注ぎ足さない日が出ると、それが習慣になり、いつ油を注ぎ足したか分からなくなり、誰かがやっているだろうと油断していつの間にか火は消えてしまうというお話しです。
油断してはならないという話は、建設業の安全や品質にも通じる話として参考になったと思います。

坂本駅で記念撮影

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